立ち塞がるようにして現れた男の眼は血走っていた。
歪んで小刻みに震える唇はまた、その怒りの激しさを物語っているようでもある。
彼は言った。
「分かってんのか。お前も道連れだ。全部終わりだ。お前が馬鹿な真似をしてくれたせいで―――」
この場において部外者である坂本にその言葉の意味を理解することはできなかったが、しかし
はそうではないのだろう。まっすぐに伸びた背筋が小さく震え、だらりと下げられたままの手が拳をつくって緊張を示している。
だがその声はどこか晴れ晴れとしていた。
「覚悟の上でそうしたんです。正しいことをしたという自信があります」
「正しいだって!? そんなことで俺の将来を潰してくれたのか!?」
ほとんど叫ぶような勢いで喚く男の目はおおよそ正気とは言えるものは窺えない。あまりの勢いに
も戸惑い、一歩後退るくらいだった。
それでも坂本との距離はまだずいぶんと開いている。腕を伸ばしても彼女に触れることは叶わないだろう。
「ふざけるなよ……あとちょっとで、あとちょっとで……大金が手に入るところだったんだぞ!? それさえあれば、新しい機材も入れられたし、俺たちの研究にあちこちから助成が掛かったはずだ! お前は俺だけじゃない、たくさんの人の夢をぶっ潰したんだ!!」
責め立てる声に
の肩が震えるが、しかし彼女は言い返した。
「嘘偽りを並べ立てて叶う夢なんて幻です! 実際に世間は許してくれなかったじゃないですか! だからあんな風に―――」
「そのためにお前を置いといたんじゃねえかッ!!」
怒号が女の言葉を遮って路地に響いた。
「やっぱり教授の言う通りにすべきだったんだ……あああ……全部お前のせいだ……」
「ど……どういう意味ですか……」
「……まだ分かんねぇのかよ、ホント頭の悪い女だな……」
小早川は完全に
の背後に一人の少年が佇んでいることに気が付いていないのか、あるいはもはや隠しだてすることは出来ないと覚悟しているのか―――坂本は前者だろうとあたりをつける―――乱れた髪をさらにかき乱しながら語る。
「お前なんて、データだけ貰ってさっさと研究室から追い出すべきだと教授は言ったんだ……けど、俺はお前を残した。女の研究者は世間ウケが悪いって理由で共同研究者名義にしようって言ったら、お前、嬉しそうにしてたよなぁ? 俺がお前のためにしてやってるんだって本気で思ったのか?」
は応えない。微動だにせず言葉の続きを待っている。
男は嘲笑とともに明かした。
「逆だよ! なんかあったとき……バレちまったときにお前に全部引っ被せるために置いといたんだよ! どうせ世間のバカどもは真相なんかより女のやらかしのほうが喜ぶだろうからな! それ以外に使い道もねぇだろうがッ!!」
「先輩……あなたという人は!」
「うるせぇッ! うるせえうるせえあああああああ!! どーすんだよ! どうしてくれんだよ! 全部台無しだ! やりたかった研究も、大金も、全部終わりだ―――教授とも連絡がつかねぇし、理学所も―――」
「ばっ、馬鹿みたい! 私じゃなくて、あなたが切り捨てられているんじゃないですか!」
「黙れよ!!」
呆然とこれを眺める坂本の心は妙なくらいに凪いでいた。いっそ不思議なくらいに落ち着いて、事の成り行きを見守る余裕すらある。
つまり、この小早川なる男もまた、加害者であると同時に被害者でもあるということらしい。もちろん彼のしたこと―――
への暴力に暴言、剽窃や改ざんは許し難いが、それらが暴き立てられるやいなや、世間からの非難を一身に浴びるスケープゴートに仕立て上げられてしまったようだ。
となれば本当に改心すべきは彼の背後に立つ存在か……
これはまた大きなヤマになりそうだと肩を回して、坂本は前へ踏み出した。
彼の目の前で小早川が
の胸ぐらを掴もうとしていたのだ。
ことの真相がすっかり明らかになった今、この場で彼女を救う必要性は薄いと言える。小早川の狂乱状態を落ち着かせるためには改心を行ったほうが手っ取り早いとも思えた。
しかしここで進み出て暴漢の腕を掴まないでいられるのなら、彼は怪盗なんてやっていなかった。
そうとも、たとえ人の心に忍び込み、その人の歪んだ欲望を盗み出す術を持っていたとしても……
それだけでは駄目なのだ。この現実の世界で、不可思議な力の及ばないくせ理不尽なことばかりで、己を見下して色眼鏡で見てくるような連中で溢れた、クソみたいな現実の世界で―――
己の力で彼女を守ることができなければなんの意味もない。
少年はすんでのところで男の腕を掴んだ。
「そこまでにしといてくれる? うちの姉ちゃんの顔を何度も傷つけてもらっちゃ困るんだわ」
上から掴んだ手首を胸元に寄せるように引いてやると、小早川の口からは苦痛を訴える声が上がる。
はまた初めて坂本の存在に気が付いて、これ以上ないほど目を見開いていた。
「りゅうちゃん!」
「その呼び方、やめてもらえませんかね……」
ぼやくように応えて小早川の腕を解放してやると、彼は大げさなくらいにふらついて後退った。
「痛ってぇ……! このクソガキ、なにしやがる!」
「腕掴んだだけじゃん……貧弱すぎんだろ」
呆れた顔で
の前にかばい立つ彼を、小早川はまるで親の敵のような目で睨みつけている。
けれど少年は少しも怖気づくことはなかった。なんなら鼻歌を歌う余裕さえある。もちろん彼は無言を保っていたが、男の目にその泰然とした様子は侮蔑として受け取られたようだ。
「いきなり出てきてなんだお前はッ」
「
さんのご近所さんだよ」
答えに小早川は威嚇するような呼気をついて、今度は少年の胸ぐらを掴み上げた。上背はこの男のほうが勝っていたから、自然と彼は見上げる形になる。
「先輩! 止めてください!!」
咎めるような
の声をどこか遠くに聞きながら、坂本はただじっと男の血走った眼を睨み返す。
彼が少しも怯えていないことこそが癇にさわるのだろう。小早川はどうにかしてそれを引き出そうと罵声をぶつけた。
「お前にゃなんの関係もねえだろうが! ふざけてんじゃねえよガキが!」
胸ぐらを掴む男の手はまた彼を前後に激しく揺さぶった。
されるがままになっても、その瞳から気勢を削ぐことはできないでいる。
「たしかに俺はクソガキだけど……関係なくなんてない」
「はあ……?」
「
さんは俺の姉ちゃんなんだよ! テメェみたいなのに好き勝手されてたまるかってんだコラ!」
怒鳴り返して、坂本は男の手首の上で交差させるように手を乗せ、膝から力を抜いて全体重をそこにかけてやった。
思いもよらぬ負荷がかけられたことによって男はバランスを崩し、己の身を守るために手を離す―――
両手をアスファルトにつけた男は、飛び退って距離をとった彼を見上げた。そこではすでに姿勢を整えた少年が襟元を正している。
上背は大したことはない。肉体もよく鍛えられてはいるが、屈強と呼ぶにはまだ少し頼りないだろう。おも立ちにも少し子供らしさが残っている。
観察して、なにを思ったのだろう。
あるいはこの男は、ただ鬱憤を晴らす相手としてこの少年を選んだというだけかもしれない。
「調子に乗ってんじゃ……ねえよガキがッ!」
伏せた姿勢から突然膝を狙った低いタックルが仕掛けられる。奇しくもそれは坂本の弱点とも言える箇所だった。
「うおっ!?」
くぐもった悲鳴とともに引き倒された少年はしたたかに後頭部を打ち付け、一拍の間身悶える。長く続かなかったのは、男が彼に馬乗りになって拳を振り上げたからだ。
頬骨に衝撃と熱が走り、視界が激しく揺さぶられる。
悲鳴を上げたのは
だった。
しかし彼はにやりと口元を歪めてみせた。
「へ……っ、これで『正当防衛』だな―――」
「はあ?」
怪訝そうに眉を寄せる小早川のみぞおちに突き上げるように拳を叩き込む。すると男は身体をくの字に曲げて硬直した。
硬くなったその身体の脇を掴み、身体を捻りながらその下を脱するのは大した手間ではなかった。
直ちに体勢を整えて殴られた頬をさすりながら、坂本は今度こそ愉快そうに笑ってみせた。
「俺は『ここで』やってもいいけどよ、その後どーすんの? 俺をボコにして、あるいはアンタがボコられてぇ……その後、どうすんの?」
ニヤニヤしながら吐かれた台詞に、小早川は凍りつく。
「どうする? やる? やんない?」
声が自信に満ちあふれているのはもちろん理由がある。彼は怪盗団の特攻隊長として常に鉄火場に切り込んできた。今さら少し身体が大きいだけの武装もしていない『人間』なんて恐れる理由がないのだ。
それに―――
カッコつけるなら、イイところを見せるのなら、今しかない。
自信満々に顎を上げた少年に、小早川は目を眇めて歯を噛み、拳を震わせる。
張り詰めた緊張が二人の間に漂い、一歩下がったところで未だに呆然としたままの
がそれを見つめている。
結局、小早川はまだ大人としての理性的な一面を、欠片だけでも持ち合わせていたらしい。
「もう終わりだ……なにもかも……」
呟くなり踵を返して遠ざかった。
それでも警戒してしばらくその背を見つめていたが、やがて男は角を曲がり、今度こそ本当に姿を消した。
「……ふうっ」
やれやれ、と息をついて知らない間に緊張していたらしい身体から力を抜く。
実際のところ、本当に殴り合いの喧嘩になったとしたら勝敗は五分五分だっただろう。こんな見た目をしていたって、彼は積極的に人を殴りたいとも、殴ることを楽しもうなどとも思ったことはあまりない。スポーツの範囲に収まりきらないやり取りなんてものは、彼にしたって大歓迎というわけではなかった。
それでももう一発くらいはやり返しておけばよかったとぼんやり思いながら、坂本は踵を軸にくるりと身を反転させる。そこに
がいてくれるはずだ。
当然彼女はまだそこに立っている。しかしどうしてか怒りに満ちた表情と眼でもって彼を見上げている―――
「な、なんで?」
戸惑いがちで率直な問いかけに、
は怒声でこたえた。
「どうしてあんなことをしたの!!」
「ひえっ……」
「あんなふうに割って入ったりして、危ないって解らないわけじゃないでしょう!?」
「い、いやそれは、だって姉ちゃんが……」
「だってじゃありません!」
理不尽な怒りと言葉に、坂本は肩をすくめて項垂れた。こんなふうに叱られることも初めてのことだ。彼はこの上なく意気消沈して、
の足元、スェード調の素材のショートブーツ、その細身なシルエットのつま先を見つめた。
七センチほどの高さのヒールが、一歩前に進み出るとアスファルトを叩いてコツンと鳴いた。
「こんな危ないことをさせたかったわけじゃない」
震えた声にはっとして顔を上げる。
は少年の目の前にいて、怒りにではなく悲しみによって顔を歪め、瞳に涙をためていた。
「ねっ、姉ちゃ―――」
発作的にごめんなさいと言いそうになるのを、またヒールが地を叩く音が遮った。
暖かくて柔らかな感触と甘やかな匂い。少年は今度こそ言葉を失って硬直した。
「やっぱりあのとき、りゅうちゃんに声をかけるべきじゃなかったんだ……ごめんね……ごめん……!」
震える腕が背に回されて、少年のジャケットのバックシームを引き千切らんばかりに握りしめる。
繰り返し繰り返し謝罪の言葉を吐き出すわけは薄っすらと察しがついている。
があのとき……一年と少しぶりに坂本に声をかけたのは、奥村があの場にいたからだろう。坂本に声をかけることで彼女の顔を確認したかったのか、あるいは接触を図るつもりだったのかもしれない。
少なくとも目論見は成功した。
は坂本を『利用』して、奥村―――オクムラフーズの代表取締役、その一人娘である奥村春に改ざんと隠蔽の事実を伝え、それを暴かせたのだ。
謝ることなんてないと坂本は思う。
少なくとも
は途中までは奥村との接触のため、己一人でホテルに忍び込みまでしたではないか。そもそも告発を思い立って行動に移すことだって、坂本からすれば立派な行いだ。
けれど彼女にとってはそうではないらしい。
「いいよ。姉ちゃん、謝らなくて」
受容の言葉は上滑りする。
「自分でやるべきだったんだよ。りゅうちゃんを巻き込むべきじゃなかった、そしたらこんなことにならなかったのに……」
「聞いてくれよ。姉ちゃんのせいじゃねぇだろ」
「違う。私が怖気づいて、保身に走ったから―――」
埒が明かない。
坂本は苛立ちによって目を細めた。
元来気の長いほうではないのだ。バッとやってガーッとなってポンと結果が出たほうが彼にとっては爽快だったし、単純明快なもののほうが好ましく思える性質だ。
だから彼はその通りにした。
上から覆うように彼女の背に腕を回し、力を籠めて抱きしめ返す。
そうすると彼女のシャンプーだとか、ヘアワックスだとか、フレグランスだとか―――その奥に隠されたかすかな汗や体臭がより強く鼻孔を刺激する。包み隠さずに言えばそれはとても快い香りだった。
胸いっぱいにそれをすいこんで―――彼は己のこの行いをちょっとヘンタイっぽいなと思った―――自分のもどかしさや想いが伝わるように彼女の耳元に鼻先を擦りつけた。
この企ては功を弄したらしい。
は声を忘れて硬直し、口と目を開いて動かなくなった。
それは今までまったく気が付かないでいたことを初めて知覚して、その隔たりに呆然としているかのようだった。例えば、目の前の少年が大人には少し足りなくても、もうとっくに半人前以上にはなっていると発見したような―――
「りゅ、りゅう―――」
彼女はなにかを言おうとしたが、言わせまいと坂本は被せるように口を開いた。
「いいから。俺がやりたくてやったことなんだよ。それをいちいち謝られたらカッコつかねえじゃん。少しくらいいいカッコさせてくれたっていいだろ……」
返されたのは沈黙だった。
やはりこの程度では駄目だったかと歯を噛む彼の目と耳に、信じられないものが飛び込んだ。
「……ごめん」
気まずそうに目をそらして頭をかく黒髪と伊達眼鏡。その脇に抱えられた鞄から覗く黒と白の柄の猫。おそらくきっと、覗こうと思ったのかあるいは心配になって着いてきたのだろう。
「んなーっ!!」
奇声を上げて、少年は思い切り
を引き剥がし、三歩ほど飛び退って壁に後頭部を強打した。
のほうはそんな彼の奇行に再び目を見開いてきょとんとしている。
「ち、ちげーからな!! これは、あの……ジョーキョー的に仕方なくっ!!」
「い、いいんだ竜司。なにも言うな。お、お前が先に、ぐすっ、大人になっちゃったとしても、俺たち……うっ、と、友達……だから……」
何故か涙ぐんで鞄から猫を引きずり出し、ぎゅっとその両腕に抱きしめながら少年は背をむける。
坂本は慌てて彼に腕を伸ばしたが、猫が嫌がって少年の腕から逃れるのと彼が走り出すほうが早かった。
「竜司のバカ! 裏切者! いっせーのせで大人になろうねって約束したのに!!」
「してねえよ!! 待てコラぁ!!」
完全にからかわれておちょくられているのだと理解していても、追わないわけにはいかなかった。このまま仲間たちと合流した彼に、ないことないことを喚かれてはたまったものじゃない。
しかし―――
呆然とした様子で二人の少年と猫を見比べる
を放り出したまま消えるわけにもいかない。
坂本はしばらくその場で足踏みをして、彼女を振り返って告げてやる。
「もう―――もうなんにも心配することねえから! あとは全部、こっちで片づけるから! 姉ちゃんは―――」
視界の端でモルガナがするりと
の足元にすり寄るのが見える。どうやら彼は気を利かせて、彼女に付き添ってくれるつもりでいるらしい。
「姉ちゃんは……また、前みたいに……笑っててくれればいいから」
言ってから、それがずいぶん気取った恥ずかしい台詞だと気が付いて、坂本は直ちに踵を返して先を行く少年に追いすがった。
背後から組み付いてハンマーロック、もう片方の腕でフェイスロックを掛けてクラッチ。
これに何故か掛けられたほうが「チキン・ウィング!」と苦悶とともに叫んだ。
残された
はしばらくぽかんとしていたが、足元の黒猫が「ニャー」と鳴いてまるで先導するように尾を振るので、彼に従って駅へ向かって歩き始めた。
……
結局少年が目撃した光景を余すことなく報告されてしまった坂本はさんざん仲間たちにからかわれて弄ばれた。
「俺というものがありながら、この浮気者。くたばれ。改心しろ」
「お前は所詮その程度の男だ。いずれ報いを受けさせてやる」
男子からはブーイングを、
「やるじゃん竜司ぃ! このこのぉ!」
「頑張ったわね。ふーん……そっかぁ」
「今回ばかりはよくやったと言ってやる。グッジョブだ!」
「えらいえらい。やっぱりこうでなくっちゃね、うふふっ」
女子からは賞賛の声を授かって、坂本はモルガナに縋りついた。
「なんとかしてくれよ……もうヤダぁ……」
「どうにもならん。オマエが彼女をだ・き・し・め・て! いたのは事実だろ」
猫は冷たかった。
怪盗団のアジト、四軒茶屋の路地裏、喫茶ルブランの屋根裏部屋に集った彼らの中心には、プリントアウトされた一枚のポストカードが鎮座している。
赤と黒、トップハットに仮面の意匠、綴られた文言―――
間違いなくそれは『予告状』だ。
「あ゛ーもうっ! いい加減にしろお前ら!! 今日はこれをどーやってアイツに渡すかってことで集まったんだろーが!!」
一喝に怪盗たちは顔から笑みを消して居住まいを正した。
「どうってもなぁ……郵送する? 切手コンビニで買ってこよっか?」
顎に指を添えて小首を傾げた高巻に、しかし頭領が異を唱える。
「地味だ。もっとインパクトが欲しい」
「えーっ」
唇を尖らせて不満を表す高巻の隣で、新島が腕を組んで眉を寄せる。うーんと唸りもしてテーブルの上の予告状を取り上げもした。
「そうは言ってもねぇ……今はあまり目立つようなことは避けたいわ。現状小早川はもう十分追い詰められているのだし、私たちがこれ以上メディアを刺激する必要はないんじゃない?」
もっともな言論に、少年はベッドに倒れ込んで足をばたつかせる。
「暴れるな、埃が立つ。改心は小早川だけでいいのか? 事には大学全体と理学所も関わっているのだろう?」
「そっちもまとめてやっちゃってもいいけど……」
喜多川の問いには佐倉が答えた。
「今回は改心以上に、小早川の口から裏の繋がりを全部暴露させることが重要だ。渦中の男が国立大学と国営の研究所との黒いつながりをベラベラ喋ってくれれば―――」
「加熱する怪盗団を非難する内容の報道も少しは収まるかもしれない、だね」
坂本の腕から逃れたモルガナを膝の上に向かえてやりつつ奥村が言を継いだ。
一同は頷き合って再び予告状に目を向ける。
そうとも、
は坂本を利用することに罪悪感を覚えていた様子だが……
彼らにしたってこれは素晴らしい機会だった。世論や衆生の目を逸らすのに、この度の事案はこの上なく好都合だ。
少年たちはしばらくの間喧々諤々とやりあったが、やがて一応の結論を出すと三々五々に解散した。